徳富蘆花 不如帰
あき
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伊香保よりみさわの観音まで
一里あまりの間は、
ひとすじの道、
蛇のごとく禿山の中腹に沿うてうねり
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ただ二か所ばかりの
山の裂け目の谷をなせるに陥りて
またはい上がれるほかは、
目をねむりても行かるべき道なり。
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下はあかぎよりじょうもうの
平原を見晴らしつ。
ここらあたりは一面の草原なれば、
春のころは野焼きのあとの黒める土より、
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さまざまの
草かやはぎききょうおみなえしの
若芽など、はえいでて
毛氈を敷けるがごとく、
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美しき草花
その間に咲き乱れ、
綿帽子着たぜんまい、
ひょろりとしたわらび、
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ここもそこもたちて、
ひとたびここにおり立たば
春の日のながきも
忘るべき所なり。
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