■ 自動伴奏システム Eurydice (ユリディス) デモ

東京大学で開発した自動伴奏システム Eurydice (ユリディス)は、ピアノ演奏の伴奏部分を自動演奏するシステムです。人の演奏は、特に練習時は、テンポの緩急、音間違い、音抜け、音付加、弾き直し、弾き飛ばしなど様々な確率的現象が起こりますが、それを楽譜を参照して、演奏者はどこを弾いている(つもりな)のかを即座に知能的に推定(HMMの隠れ状態の最尤推定)して、伴奏を合わせます。これには、特許取得した高速Viterbiアルゴリズムが役立っています。一人コンチェルトなど様々な応用ができます。一つの技術で、何の調整もなく、初心者から熟練ピアニストまで対応できるところを見て下さい。

[名前の由来] ギリシア神話で Eurydice (希エフリュディケ、伊エウリディーチェ、英ユリディス)は Orpheus の最愛の妻です。 毒蛇に噛まれて死に、オルフェウスは連れ戻しに冥界に下ったのでした。 彼は竪琴の演奏で冥王ハデスの心をも動かし、決して振り返らないことを条件に、妻を連れ帰る許しを得ました。 しかし、妻の足音だけを聴いているうちに不安に駆られ、地上に出る直前ついに振り返り、妻は永遠に失われたのでした。 このシステムも、演奏者のピアノにオーケストラがぴったりとついてきます。 しかし、振り返ってはなりません。 その瞬間に、背後に感じていたずのオーケストラは消えうせてしまうのだから。

S. Rachmaninov(ラフマニノフ)作曲 ピアノ協奏曲 第3番 (Op. 30) 第1楽章 自動伴奏デモ

作曲当時はラフマニノフ以外に弾ける人がいなかった(ホロヴィッツが弾くまでは)難曲中の難曲。 オーストラリア出身の実在のピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットの半生を描いた感動的な映画『シャイン』では、この曲が「世界一難しい大曲」として主人公に強迫的な存在として使われている。 ピアノの音符だけでもの何千とある中で、どこを弾いているのか、演奏に緩急があっても、弾き間違い(演奏者によると結構あるらしい)があっても、ジャンプしたり弾き直したりしても(この演奏ではしていないが)、直ちに演奏箇所を推定して、オーケストラ伴奏の音を生成して追随する技術を見て欲しい。
【裏話】 なぜこのような難曲をデモ用に選んだのか? 実は、冒頭の26小節は第一主題提示を両手ユニゾンで奏するので、素人ピアニストでも初見で弾ける。 名曲のサワリをオーケストラ伴奏で弾ける楽しさは、まさしくこのシステムの狙いだった。 何とその後、垣浪文美香さんが第一楽章を全部弾いて下さった。

ピアノ練習への応用(練習する人+先生役の自動伴奏): 米国音響学会での招待講演用ビデオとして作成

  • Video: 極端に速いデュオ(ASA_slide_demo_v1.mp4)
  • モーツアルトのピアノデュオ(「のだめカンタービレ」で有名になった。)

  • Video: 連弾練習デモ(実際にピアノで)(ASA_slide_demo_v2.mp4)
  • 実際に楽器屋でピアノ(MIDI制御機能付き)で連弾曲の練習。 練習では何度も間違うし、弾き直しをする。 連弾相手の先生は、それを理解して合わせる知能を持たねばならない。

  • Video: ピアノ練習デモ、検索 (EurydiceDemo_ASA2014_v2.mp4)
  • 初心者がシューマンの「楽しき農夫」を間違いだらけで左手練習  ~ 右手練習  ~ 旋律のみ  ~ デュオの練習  ~ あちこちにジャンプしてコンチェルトの練習  ~ ショパンのピアノコンチェルトは装飾音が多いので難しい追跡をこなしている  ~ ベートーベンのソナタ全集で、弾いたパッセージに最も近い箇所へ飛んでくれる

合奏への応用: W. A. Mozart(モーツァルト)クラリネット3重奏を、欠席者がいても練習

■ 機能和声ラベルデータベース KSN database