706945 / nat
泣き虫狼男さん小さな森の中、狼男が暮らしていた
森の外れでひとりぼっち
それでも寂しくないのか
平気そうに暮らしていた
ある満月の夜のことだった
夜の森から小さな女の子がやってきた
少女の名前はユノ
狼男とユノは不思議と仲良くなった
ふたりは違う生き物だった
ユノは吸血鬼だった
太陽に当たると死んでしまう
しかし、彼女はそのことは黙っていた
狼男はユノがプレゼントした
本を読みながら呟いた
「夜明けを見てみたい」
狼男は太陽に当たると人の姿に戻ってしまう
それでも、はじめてできた友達と
夜明けが見たかった
狼男は人間が嫌いだった
だから人の姿になる自分も嫌いだった
しかし、彼は吸血鬼の少女と出会って変わった
彼女と一緒に美しい朝日を見たいと願った
少女はそんな彼の願いを叶えるため
ずっと一緒にいてくれた
そして、ふたりは旅に出た
朝焼けを見るために
太陽が昇る方角を目指して
やがてふたりはたどり着いた
狼男の少年と少女が出会った場所へと
それは満月の夜だった
ふたりはあの場所で
手をつなぎながら立っていた
繋がったところから
やさしいぬくもりが伝わった
東の空が明るくなっていく
「これが夜明けだよ」
そう彼女は呟くと小さく別れを告げた
「どんな姿でも私は愛してる」
泣きながら人の姿に戻っていく狼男
それを見守りながら消えていく吸血鬼
これは泣き虫で
一人ぼっちな狼男の物語
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