599084 / 薄氷雨様 / mico
8月の記憶ラムネ瓶越し 入道雲
透き通る 空を見た
あれは 何年前の
8月でしょうか
半そでから覗く腕と
すべてを見通しそうな瞳が
私を捕まえました
あなたはまるで 太陽でした
何もかもが煌めいては 零れて落ちてゆきました
指の間をすりぬける モノクロームの時間の中に
あなたが夏を連れてきた
あなたが空を青くした
鏡越し 褪せた8月
澄み渡る海を 想起した
いつかの 夏 が
幻のようで
何もつかめない腕と
色を失いそうな瞳で
あなたの影に手を伸ばす
私は刹那 向日葵でした
何もかもが残像と化し 崩れて落ちてゆきました
あなたの背中を見失い 夏の太陽を見失い
私は空の色を消す
あなたが夏を連れ去っていく
空で輝く太陽と
小さな小さな向日葵は
2度と交わらないのです
出会いはまるで 泡沫でした
ラムネ瓶越し 入道雲
優しく笑う あなたを見た
それは忘れることのない
8月の記憶なのでした
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